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生成AI時代を牽引する「AI Data Cloud」、Snowflakeの最新動向と成長戦略を徹底解説

目次

  1. はじめに
  2. Snowflakeとは何か ── Data Cloudの基盤技術と強み
  3. FY2026第1四半期決算から読み解く成長エンジン
  4. AI戦略の進化:Cortex・Arctic・NVIDIA提携
  5. PostgreSQL強化へ ── Crunchy Data買収の真意
  6. 競合環境:Databricksとの「AIデータベース戦争」
  7. 今後の課題と展望
  8. 用語解説

1. はじめに

生成AIブームは、データ基盤の在り方そのものを再定義しつつあります。その中心で存在感を増しているのが Snowflake。クラウドネイティブなデータプラットフォーム「AI Data Cloud」を掲げ、データの格納・共有から分析、AIアプリ開発までを単一基盤で完結させる構想を加速させています。
本稿では、最新決算とAI関連ニュースを踏まえ、Snowflakeの成長ドライバーと今後の戦略を多角的に解説します。


2. Snowflakeとは何か ── Data Cloudの基盤技術と強み

Snowflakeは複数のクラウドをまたいで利用可能なマルチクラウド(AWS・Azure・GCP)対応の “共有ディスク&分離コンピュート” アーキテクチャを採用し、スケールアウトと従量課金を両立します。大きな特徴は次の4点です。

強み解説
クラウドネイティブ設計ストレージとコンピュートを分離、リソースを弾力的に最適化
リアルタイムデータ共有企業間でセキュアにデータをやり取りできる「データシェアリング」機能
マルチクラウド/クロスクラウド異なるクラウド間でも単一クエリで統合分析が可能
AI連携の拡張性生成AIモデルの学習用データレイクから推論ワークロードまで一気通貫(Cortex)

Snowflakeは金融、製造、小売、ヘルスケア、テック企業などフォーチュン500企業を含む幅広い顧客基盤を持ち、年間1億ドル超を支払う大口顧客は約600社へ拡大しています。


3. FY2026第1四半期決算から読み解く成長エンジン

2026年度Q1(2025年2–4月)のハイライトは以下のとおりです。

  • 売上高:10億ドル(前年同期比+26%)
  • プロダクト収入:9.97億ドル(+26%)
  • ネットリテンションレート:124%
  • 1億ドル以上の顧客数:606社(+27%)

株式報酬費を含むGAAPでは営業赤字4.47億ドルですが、株式報酬を除くNon-GAAPでは9,170万ドルの営業黒字を確保。営業キャッシュフローも黒字を維持しています。
売上成長率が20%台に緩やかに着地した一方で、**RPO(残存パフォーマンス義務)**が67億ドル(+34%)と継続的な受注残を示し、“消費型ビジネスモデル” の粘着力が改めて浮き彫りになりました。


4. AI戦略の進化:Cortex・Arctic・NVIDIA提携

4-1. Cortex AI:SQLで呼び出せる生成AI

Snowflakeは2025年5月に 「Cortex AISQL」 を発表し、SQLクエリから直接LLMを呼び出せるようにしました。非エンジニアも自然言語で洞察を得る “誰でも分析可能 “が狙いです。

4-2. Arctic:オープンソースLLM

自社開発の大規模言語モデル 「Arctic」 をオープンソースで公開し、推論高速化エンジン Shift Parallelism も無償提供。企業は自社データをSnowflake内に残したまま、低遅延・高スループットの生成AIアプリを構築できます。

4-3. NVIDIAとの「AIファクトリー」構想

2024年3月にはNVIDIAとの協業を拡大し、Snowflake Cortex上で利用できるAIプラットフォーム”を提供。データの安全性を担保しつつ、GPUアクセラレーションで高性能推論を実現します。

ポイント:自社LLM「Arctic」と外部LLM(OpenAI・Anthropic・Meta・Mistral等)の“ハブ” となることで、Snowflakeは**「ベンダーニュートラルなAIデータ基盤」**を目指しています。


5. PostgreSQL強化へ ── Crunchy Data買収の真意

2025年6月、SnowflakeはPostgreSQLベンダー「Crunchy Data」を約2.5億ドルで買収すると発表しました。買収完了後は「Snowflake Postgres」としてサービス化し、データベースのPostgresをSnowflakeのサービス上でコードを書き換えることなく利用できるようになります。

Crunchy Dataは政府・金融向け高いセキュリティ要件を満たす点が評価されており、SnowflakeはエンタープライズAIエージェント時代に向けて、“トランザクションDB+データクラウド+LLM推論” をシームレスに組み合わせる戦略を鮮明にしました。


6. 競合環境:Databricksとの「AIデータベース戦争」

同じ週、DatabricksはサーバレスPostgresの Neon を10億ドルで買収。Snowflake vs. Databricks の戦いは「データウェアハウス」から「AIエージェント基盤」へと舞台を移しつつあります。

  • Snowflake派:製品やサービスのガバナンス強みを活かし、Postgresを一体化して“データとAIを一元管理”
  • Databricks派:提供するソフトウェア上に高速・弾力的なサーバレスDBを組み込み、“AIネイティブ開発” を前面に押し出す

急拡大する生成AI市場では、「推論コスト」「データ主権」「マルチワークロード統合」が勝敗を分ける鍵となるでしょう。


7. 今後の課題と展望

  1. 成長ペースの鈍化:売上成長率が20%台前半に落ち着きつつある。AI関連の新サービスで再加速できるか。
  2. 費用構造:従業員への株式報酬が多く、利益を圧迫している。どこまで抑えられるか。
  3. エコシステム競争Databricks、GoogleやMicrosoftなど大手も似たサービスを強化しており、差別化が必要。
  4. 規制対応:欧州を中心にデータの国外持ち出し制限が強まる中、地域ごとの対応策が求められる。

とはいえ、Snowflakeは受注残高が大きく、開発資金には余裕があります。取引データの保存から分析、AI活用までを一つにまとめる構想がうまく進めば、企業にとって「データを扱う標準的な場所」になる可能性があります。



8. 用語解説

用語簡易定義
AI Data CloudSnowflakeが提唱する、データ保管・共有・分析・AIモデル実行を単一基盤で実現するクラウドサービス群。
Cortex AI / AISQLSnowflake上でSQLから直接LLMを呼び出し、要約・翻訳・ベクトル検索などを行う機能。
ArcticSnowflake自社開発のオープンソースLLM。効率的学習と推論が特徴。
Crunchy Dataセキュリティ規格対応に強いエンタープライズ向けPostgreSQLサプライヤー。2025年6月Snowflakeが買収合意。
エージェントAI自律的にタスクを実行するAI。複数LLMとツールを組合せ、DBを自動作成・更新するワークロードが想定される。
  

まとめ

Snowflakeは、これまで「クラウドで動くデータの倉庫」として知られてきましたが、いまや「AIの作業場」としても存在感を増しています。「Crunchy Data」の買収で日常業務のデータも取り込み、CortexやArcticでAIの使い勝手を高める──こうした一連の動きは、企業がデータとAIをワンストップで利用できる未来を示しています。高度な用語にとらわれず、まずは「大量の情報を安全に預け、必要なときにすぐ引き出し、AIで活かす」仕組みとしてSnowflakeを眺めてみると、その価値がいっそうわかりやすくなるでしょう。

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