2025年6月発表の決算から、高砂香料工業の業績と今後の展望をまとめました。
目次
Contents
- 会社概要と事業セグメント
 - 2025年3月期決算のポイント
 - セグメント別・地域別の成長動向
 - 2026年3月期の会社見通しと減益要因
 - 中期戦略(NGP-2)の進捗
 - 株主還元と資本政策
 - まとめ:海外成長と人口増加が将来のカタリストに
 
会社概要と事業セグメント
高砂香料工業は1920年創業、食品・日用品・医薬品などに使われる香料や中間体を製造・販売する日本有数の香料メーカーです。従業員は約3,400名、世界各地に拠点を持ち、グローバルに展開しています。
主な事業は4つのセグメント:
- フレーバー事業:飲料・菓子・調味料向け食品香料
 - フレグランス事業:洗剤・芳香剤・香水向け香料
 - アロマイングリディエンツ事業:天然・合成香料の原料製造
 - ファインケミカル事業:医薬品中間体などの受託製造
 
2025年3月期決算のポイント(連結)
- 売上高:2,292億円(前年比+17.0%)
 - 営業利益:153億円(+562.4%、過去最高)
 - 当期純利益:133億円(+393.8%)
 - 営業利益率:6.7%(+5.5pt)
 - ROE:9.8%(目標8%以上達成)
 - フリーキャッシュフロー:98億円(過去最高水準)
 - 現金残高:355億円(前年比+172億円)
 
業績急拡大の背景には、全セグメントでの利益改善と、特に海外市場の売上増加が大きく寄与しました。
セグメント別・地域別の成長動向
セグメント別成長率(売上 / 営業利益)
- フレーバー:+9.8% / +351.0%
 - フレグランス:+18.8% / 黒字転換
 - アロマイン:+20.7% / +183.8%
 - ファインケミカル:+84.0% / +946.2%
 
特にファインケミカル事業が爆発的な成長を遂げており、欧米の製薬企業向け出荷が伸びました。
地域別の成長率(売上 / 営業利益)
- 米州:+32.2% / +1,514.5%
 - アジア:+24.5% / +122.9%
 - 欧州:+18.2% / 赤字→黒字転換
 - 日本:+1.7% / +229.5%
 
海外比率の高さが際立っており、グローバル展開の成果が表れています。
2026年3月期の会社見通しと減益要因
- 売上高:2,300億円(+0.3%)
 - 営業利益:125億円(△18.5%)
 - 純利益:117億円(△12.2%)
 - 配当:240円(据置、株式分割前換算)
 
前年の一過性要因(政策保有株売却益や利益戻入)の剥落、関税コストの増加、販管費の増加が影響し、減益見通しです。
中期戦略(NGP-2)の進捗
- 海外展開:中南米・中東・インド市場の開拓に注力
 - 収益性改善:高付加価値製品シフト、生産・物流効率化
 - 環境対応:再生可能エネルギーの導入やLCA評価の推進
 
株主還元と資本政策
- 配当:240円(配当性向40%、DOE3.2%)
 - 株式分割:2025年10月に1株→5株
 - PBR:0.86倍(1倍回復を目指す)
 
財務の健全性が高まり、積極的な株主還元方針が維持されています。
まとめ:海外成長と人口増加が将来のカタリストに
高砂香料工業は2025年3月期に過去最高益を達成し、財務・キャッシュフローの両面で大きな改善を見せました。中でも海外比率の高さと成長性が際立っており、今後の新興国における人口増加・消費拡大が長期的なカタリストとなり得ます。
フレーバー・ファインケミカルを中心に世界需要を取り込みつつ、安定した株主還元と収益性強化にも注力する同社は、今後も注目すべきグローバル銘柄の一つです。

			
			
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